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医科のかかりつけ医と歯科が医療連携する目的
医科のかかりつけ医(主治医)と歯科が連携することには、大きく分けて以下の目的があります。
これは、患者さんの健康を総合的に管理し、全身疾患のリスクを減らすとともに、より適切な治療を提供するために重要です。
1. 全身の健康管理と病気の早期発見・早期治療
(1)慢性疾患の管理
- 糖尿病:
糖尿病患者は歯周病になりやすく、逆に歯周病が進行すると血糖値のコントロールが悪化します。
かかりつけ医と歯科が情報を共有し、適切な治療を行うことで、血糖コントロールを改善できます。 - 高血圧・心疾患:
歯周病は心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めることが知られており、
医科と歯科が連携することでリスク管理がしやすくなります。
(2)誤嚥性肺炎の予防
- 高齢者は嚥下機能が低下しやすく、口腔内の細菌が肺に入り込むことで誤嚥性肺炎を発症するリスクがあります。
かかりつけ医と歯科が連携し、口腔ケアや嚥下機能の評価を行うことで、誤嚥性肺炎の予防が可能です。
2. 周術期(手術前後)の口腔管理
手術を予定している患者さんに対して、手術前に口腔内を清潔にしておくことで、術後の感染症リスクを減らすことができます。
特に以下のような手術では、医科と歯科の連携が重要です。
- 心臓血管外科手術(心臓弁膜症の手術など)
- 人工関節置換術(整形外科)
- がん治療(化学療法・放射線治療)
- 移植手術
これらの手術では、口腔内に感染源があると手術の成功率に影響するため、事前に歯科でのチェックと治療を受けることが推奨されます。
3. 妊娠中の健康管理
妊娠中はホルモンの影響で歯周病が悪化しやすく、それが早産や低体重児出産のリスクを高めることがわかっています。
かかりつけ医(産科・婦人科)と歯科が連携することで、妊娠中の口腔ケアを強化し、母子の健康を守ることができます。
4. 高齢者のフレイル・認知症予防
フレイル(虚弱)や認知症の進行を抑えるためには、しっかり噛んで食べることが重要です。
かかりつけ医と歯科が協力し、噛む力や嚥下機能を評価・管理することで、低栄養や筋力低下を予防できます。
5. 服用薬の安全管理
多くの患者さんが複数の薬を服用しており、歯科治療時にはその影響を考慮する必要があります。
- 抗凝固薬(血液をサラサラにする薬):
抜歯や手術時に出血リスクが高まるため、かかりつけ医と歯科医が情報を共有し、適切な処置を行う必要があります。 - 骨粗しょう症治療薬(ビスフォスフォネート系薬剤):
歯科治療による顎骨壊死(骨が壊れるリスク)があるため、事前の評価と連携が重要です。
6. 患者さんの医療アクセス向上
かかりつけ医と歯科が連携することで、患者さんが必要な医療をスムーズに受けられるようになります。
- 医科の診察時に歯科受診を推奨(例:糖尿病患者に対して歯周病の検査を勧める)
- 歯科での診療時に医科受診を促す(例:高血圧や糖尿病が疑われる患者に医科での検査を勧める)
これにより、患者さんが早期に適切な治療を受ける機会が増え、重症化を防ぐことができます。
まとめ
医科のかかりつけ医と歯科が連携することで、以下のようなメリットがあります。
- 全身の病気の早期発見・管理(糖尿病・高血圧・誤嚥性肺炎など)
- 手術前後の感染症予防(周術期口腔管理)
- 妊娠期の健康管理(早産・低体重児予防)
- 高齢者の健康維持(フレイル・認知症予防)
- 薬の安全管理(抗凝固薬・骨粗しょう症治療薬など)
- 医療アクセスの向上(患者のスムーズな受診)
医科と歯科の協力によって、患者さんにとってより安全で質の高い医療を提供することが可能になります。
通院中の方、お薬を服用中の方は、問診票に記載をお願いいたします。