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高血圧や糖尿病の患者さんが歯科治療を受ける際の注意点
高血圧や糖尿病の患者さんは、全身の健康状態が歯科治療に影響を与えるため、治療を受ける際には特別な配慮が必要です。
以下のポイントに注意して、安全に治療を受けるようにしましょう。
1. 高血圧の患者さんが気を付けること
① 血圧を安定させる
- 治療前に**血圧が高すぎる場合(収縮期血圧180mmHg以上)**は、リスクが高いため、治療を延期することがあります。
- 自宅での血圧測定を習慣化し、安定している状態で歯科治療を受けることが大切です。
② ストレスや緊張を避ける
- 歯科治療の緊張や痛みで血圧が急上昇することがあります。
- リラックスできるよう、予約時間を余裕のある時間帯に設定したり、深呼吸やリラックス法を試すのも有効です。
③ 局所麻酔の影響に注意
- エピネフリン(血管収縮薬)が含まれる麻酔薬は血圧を上昇させる可能性があります。
- 歯科医に「高血圧の薬を飲んでいる」と伝えることで、適切な麻酔の選択や最小限の使用を考慮してもらえます。
④ 降圧薬の副作用(歯肉の腫れ)に注意
- 一部の降圧薬(カルシウム拮抗薬)は**歯肉増殖(歯茎が腫れる)**を引き起こすことがあります。
- 歯磨きを丁寧に行い、歯科で定期的なクリーニングを受けることが重要です。
⑤ 治療前に血圧測定をする
- 可能であれば、自宅で血圧を測定して記録し、歯科医に伝えましょう。
- 診療前に歯科医院で血圧を測定することもあります。
2. 糖尿病の患者さんが気を付けること
① 血糖値を安定させる
- **血糖値が高い(空腹時血糖値200㎎/dL以上、HbA1cが8.0%以上)**と、傷の治りが遅く、感染のリスクが高くなります。
- 歯科治療前には食事を抜かないようにする(低血糖を防ぐため)。
② 低血糖に注意
- 治療が長時間になる場合は、事前に軽食をとるなど、低血糖を防ぐ工夫が必要です。
- 治療前に血糖値を測定し、必要ならブドウ糖を準備しておきましょう。
③ 歯周病予防を徹底する
- 糖尿病の患者さんは歯周病にかかりやすく、進行しやすいため、定期的な歯科検診が大切です。
- 歯周病が悪化すると、血糖コントロールにも影響するため、歯科医と相談しながら治療を進めることが重要です。
④ 感染予防をしっかり行う
- 糖尿病患者さんは免疫力が低下しているため、抜歯や手術後の感染リスクが高まります。
- 治療後のケアを徹底し、歯科医の指示に従って抗生剤を適切に服用しましょう。
3. 高血圧・糖尿病の患者さんが共通して気を付けること
① 医科と歯科の連携
- かかりつけ医(内科)と歯科医が連携することで、安全に治療を受けられます。
- 現在の血圧や血糖値、服用中の薬を歯科医に伝えることで、より適切な治療が受けられます。
② 服用中の薬を歯科医に伝える
- 血圧や血糖値を下げる薬の影響で、歯科治療中の出血や低血糖のリスクが高まることがあります。
- 抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を服用している場合は、抜歯などの処置前に医師と相談することが大切です。
③ 歯科治療を受ける前後の体調管理
- 予約のタイミングは、**血圧や血糖値が安定している時間帯(食後2時間後など)**が理想です。
- 治療前は無理な運動やストレスを避け、睡眠をしっかりとることが重要です。
④ 歯科治療後の出血や感染に注意
- 高血圧患者さんは、血圧が高いと止血しにくいことがあります。
- 糖尿病患者さんは、傷の治りが遅く、感染しやすいため、適切なケアが必要です。
4. まとめ
高血圧の患者さん | 糖尿病の患者さん | |
---|---|---|
治療前に気を付けること | 血圧が180mmHg以上なら治療延期を検討 | 血糖値200mg/dL以上なら治療延期を検討 |
局所麻酔 | エピネフリン使用を最小限に | 基本的に影響なし |
薬の影響 | 降圧薬による歯肉増殖に注意 | 低血糖を防ぐため、食事の時間を考慮 |
感染リスク | 血圧が高いと止血しにくい | 免疫力低下で傷が治りにくい |
医科との連携 | 血圧コントロールの状況を伝える | 血糖コントロールの状況を伝える |
高血圧や糖尿病をお持ちの患者さんが安全に歯科治療を受けるためには、普段からの健康管理と医科・歯科の連携が非常に重要です。
自分の健康状態を把握しながら、無理のないスケジュールで治療を受けるようにしましょう。