マタニティ歯科
マタニティ歯科
妊娠初期にはつわりなどの体調不良が生じ、生活習慣や食習慣が乱れやすくなります。通常行えていた歯みがきも難しくなるため、口腔内の環境が荒れやすく、歯周病やう蝕の発生リスクも高くなります。
また、女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の影響で、口腔内の細菌叢および妊婦の免疫機能に影響を及ぼすため、歯肉炎や妊娠性エプーリスなどの歯肉の病気にもなりやすくなります。
将来的に妊娠を計画されている方は、事前に口腔内の健康チェックを受けましょう。
妊娠性歯周病は妊婦の半数以上に生じ、症状が深刻な場合は早産(37週未満での出産)や低体重児出産(2,500g未満での出産)のリスクも高くなることが報告されています。妊娠中の歯周病管理は非常に重要です。
詳細なメカニズムはまだ明らかではありませんが、歯周病によって生じる炎症性サイトカインなどが、全身の血流に乗って胎盤膜の炎症・子宮頚部拡張・子宮収縮を促進するためと考えられています。
ご自身の体調と相談しながら、定期的なクリーニングを受けることを推奨します。
生まれたばかりの赤ちゃんのお口には虫歯菌・歯周病菌はいません。保育者、特に母親が菌の感染源となることが多いと言われています。つまり、母親からの菌の感染を防ぐことが、う蝕予防の第一歩と考えられます。
赤ちゃんへの感染は1歳7か月から2歳7か月までと言われており、この時期は最も感染を警戒する時期です。赤ちゃんの歯が生える6~7か月前後までに保育者の虫歯治療を終わらせておくことが理想です。
歯科治療に用いる局所麻酔は、通常使用量で催奇形性などの胎児への影響は問題なく、比較的安全であるとされています。ただし、妊娠4~7週の器官形成期には胎児の中枢神経系・心臓・四肢などの重要器官が発生分化するため、麻酔薬を使用せずに歯科治療が受けられるのであれば、それが望ましいとされています。
また、妊娠8~15週は口唇口蓋が閉鎖する時期なので、薬剤による催奇形性が懸念されます。そのため、妊娠初期は積極的な歯科麻酔薬の使用は控えることが望ましいです。
ただし、緊急性をともなう歯髄炎や、痛みのコントロールが難しく、痛みによるストレスが母体に影響を及ぼす場合は、産婦人科と連携をおこない治療を進める場合があります。いずれにしても、安全性を十分考慮したうえで、歯科治療を受ける時期を決定します。
歯科治療の一番望ましい時期は安定期といわれる妊娠5~7か月が望ましく、一般の患者様と同じような歯科治療が受けられます。当院では、妊娠中に歯科麻酔薬を併用した歯科治療が必要になった場合は、担当の産婦人科医に対診したうえで進めることを行っております。
現在行われている診断目的のX線撮影は口内法、パノラマ法のどちらも母体・胎児への影響はなく、妊娠中の撮影も問題ありません。また、照射部位の線量が十分少ないので散乱線も少なく、体幹部分を防護する鉛エプロンの使用も、学術的に意味がありません。
大学病院などの施設ではすでに使用されていないため、当院でも同様の理由で使用しておりません。
つわりがひどいときは歯ブラシを口腔内に入れることも大変になってしまうため、口腔内環境が悪化しやすくなります。つわりの時期の歯磨きは以下のような工夫が必要です。
歯磨きのお悩みがある方は、ぜひご相談ください。
妊娠に気が付くころには胎児の歯はでき始めています。胎生6~7週には乳歯のもととなる歯胚が作られ、硬い歯になり始めるのが妊娠4か月ごろです。出生時には永久歯のもととなる歯胚ができ始めます。
強く丈夫な歯を作るために、妊娠中の栄養バランスにも配慮が必要です。カルシウムだけではなく、全体のバランスを考えた食事をとるようにしましょう。
歯が生える前から、口腔ケアを実施していると、赤ちゃんがお口の中を触られることに抵抗感が無くなるため、歯磨きの導入がスムーズにおこなえます。また、お口周りの筋肉への刺激にもなるため、表情筋や咀嚼筋の発達も促すことができます。
お口周りのマッサージは、親子間のコミュニケーションにもつながり、赤ちゃんのリラックス効果も期待できます。最初のうちは、指や柔らかいガーゼなど刺激の弱いものでお口の中を触ることから始め、授乳後はミルクの飲みカスなどの汚れをふき取ってください。
歯が生え始めたら、ガーゼを使ったふき取りは少しずつ減らし、歯ブラシでお口の中を触り始めてみましょう。寝そべった状態で歯磨きを行う練習も、この段階で少しずつ始めるようにしましょう。
※座ったままの歯磨きは、動かし方によっては歯ブラシが喉に刺さってしまう危険もあるため、気をつけましょう。
奥歯が生えてきたら、本格的な歯磨きの練習をおこないます。歯ブラシだけではなく、フロスを用いて歯と歯の間も清潔に保てるようにします。フッ素の利用もこの頃から始め、口腔内の環境を整えましょう。
ただし、この時期はイヤイヤ期の時期とも重なるため、歯磨きの時間は機嫌が悪い時間帯をできるだけ避け、1回の歯磨きはなるべく短時間で、その分回数を増やすなどの工夫も有効です。無理のない歯磨きを心がけましょう。
口腔内に虫歯の原因菌が感染し始めるのもこの時期です。ご家族の口腔ケアもしっかり行うよう心がけましょう。
歯磨きの仕方など不安がある場合は、なるべく早い段階で歯科医師に相談しましょう。